糖尿病は生活習慣の改善で予防〜今から食事・運動・生活を見直そう〜

当記事を監修した専門家:管理栄養士・糖尿病療養指導士 白石香代子 、編集長 宮田亘造(詳しいプロフィールはこちらをご覧ください)
「血糖値は高めだけど、糖尿病は自分には関係ない病気」と心のどこかで思っているあなた。本当にそうでしょうか?
糖尿病は、痛みなどの自覚症状がないまま進行することが多い病気です。ですので、健診で「血糖値が高い」と言われても、治療を受けずに放っておく人がたくさんいます。
しかし、何もしなければ今の血糖値が下がることはありません。
糖尿病と診断されてしまったら、本当に怖いのはその先。目や腎臓など全身の血管が傷つき、命に関わる様々な合併症を招きます。
だからこそ、大切なのは糖尿病にならないこと。つまり予防です。
そこで今回は糖尿病予防のポイントを分かりやすく解説します。糖尿病に良い食べ物や飲み物も紹介しますので、最後までお読みください。
目次
糖尿病の予防で大切なことは生活習慣の見直し
なぜ生活習慣の見直しが大切なのでしょうか。その理由は、食事の摂り方や運動、生活習慣など日々の積み重ねで、血糖値は下げられるからです。
糖尿病は生活習慣病(※)です。遺伝的な影響も関与しますが、食べ過ぎや運動不足による肥満が大きな原因となり発症します。
※食事や運動、喫煙やストレスなど、生活の中での習慣が大きく関わることで発症する病気のこと
参考記事:肥満と糖尿病の関係〜治療と予防における2つの基本をカンタン解説〜
ですので、糖尿病を遠ざけるためにはまず食事や運動、生活リズムなどの見直しが出発点となるのです。
食事を見直そう
ラーメンに半チャーハン、うどんにおにぎり、ざるそば大盛り…など、主食を重ねて食べたりたくさん食べたりしていませんか?
血糖値を上げるのは、糖質(※)です。ご飯や麺、パンなどの主食には糖質がたっぷり含まれていますので、食べる量が多くなればなるほど血糖値は急上昇し、糖尿病のリスクが上がります。
※糖質とは三大栄養素の一つである炭水化物から食物繊維を引いたもので、体や脳の活動エネルギー源になるもののこと
そこでご自身が負担なくでき、長続きしやすいという観点から糖質を今より10%控えるのはいかがでしょうか?
例えば、糖質の多いものは重ねて食べない、ご飯は多めから普通盛りにする、などです。
ご飯多め(200g)のカロリーは336kcalです。ご飯普通盛り(150g)だと252kcalですので、ご飯50g減らすだけで約80kcalのカロリーカットが出来ます。
たった80kcalでも、「チリも積もれば」で効果があります。2か月で1gの減量、半年で2kgの減量が無理なく行えるのです。
糖尿病に良い食べ物
「一体、何を食べれば良いの?」と不安になるかもしれません。しかし、食べて良いものはたくさんあります。
参考記事:糖尿病に良い食べ物は?食材やメニューをわかりやすく紹介
なかでも積極的に取り入れたいのは、野菜やきのこ、海藻などに含まれる食物繊維です。
食物繊維は腸の中に長時間留まり、糖質の吸収を邪魔してくれます。血糖値の上昇を緩やかにしてくれる栄養素で、糖尿病予防の味方です。
【一言メモ】
食物繊維の効果を最大に発揮させるポイントは、ご飯やパンなどの主食の前に食べることです。
10~15分かけてゆっくり食べましょう。
常備食品で手軽にできるレシピを紹介
血糖値の上昇を抑える食物繊維が簡単に摂れるレシピをご紹介します。
【わかめと豆腐のサラダ】
・乾燥わかめ 3g
・豆腐 1/4丁
・レタス 2枚
・ミニトマト 適量
《調味料》
・ポン酢 小さじ1
・ごま油 小さじ1/2
・ごま 少々
《作り方》
1,乾燥わかめは水で5分戻す。
2,豆腐とトマトは2センチ角に切り、レタスは一口大にちぎる。
3,1と2を器に盛り、調味料をかける。
※乾燥わかめは常備しておくと便利です。
味噌汁やスープに加えるだけでも、食物繊維の量を増やすことができます。
食事でダメなもの
食べてはいけないものはありません。しかし、糖質の多い食品を摂りすぎないよう、注意しましょう。
食べて良いお菓子はあるの?
一般的に、お菓子の原料には砂糖が多く使われています。砂糖の主な成分はショ糖という糖質の一種で、血糖値の上昇に大きく関わります。
そのため、お菓子が食べたい時には低糖質で血糖値をあげにくいナッツ類がオススメです。
参考記事:ナッツ類と血糖値の関係〜見落としがちな点をシンプルに解説〜
また最近は、低糖質な市販のお菓子がたくさん販売されています。糖質10gまでのものであれば血糖値の上昇に大きく影響しません。表示を見て選ぶようにしましょう。
飲み物は無糖が基本
甘いジュースやスポーツ飲料のような甘いと感じる飲み物には、糖分がたっぷり含まれています。お茶や水、麦茶など無糖のものだと安心です。
なお緑茶には、摂取量が多ければ多いほど糖尿病の発症リスクが低いという報告があります。
お茶さえ飲んでいたら糖尿病が防げるわけではありませんが、糖尿病予防の一つとして、緑茶を取り入れるのはよいことです。
糖尿病にはトマトジュースがおすすめ
トマトジュースに多く含まれるリコピン(※)には、インスリンの働きを促進して血糖値を下げる効果が期待されています。
※リコピンとはトマトに含まれる赤い色素のことです。老化の元となる身体の酸化を防ぐ作用があります。
無塩のトマトジュースを1日あたり200ml程度飲むのもよいですね。
参考記事:血糖値が下がる?糖尿病にトマトは良いのか
コーヒーはどう?
コーヒーのストレス緩和効果が糖尿病発症のリスクを低下させる、という研究結果があります。
コーヒーを飲む回数が1日3〜4杯の場合、2型糖尿病の発症リスクは男性で17%、女性で38%低下するとのことです。
糖尿病発症の原因の一つに「ストレス」がありますが、コーヒーのリラックス効果によりストレスが緩和されるからではないか、と考えられています。
砂糖は血糖値に影響しますので、無糖のコーヒーがオススメです。
サプリは効果的か
サプリだから何でも糖尿病予防に効果的とは断言できません。なぜなら、科学的に立証されていないものもあるからです。
食事や運動療法は、糖尿病の治療としても立証された方法です。食事をサプリに置き換えたり頼りすぎたりせず、補助的なものとして取り入れることをオススメします。
運動で血糖値を下げる
食事の見直しと並行して行いたいのが運動です。そして、運動で大切なのが筋肉です。
食事によって増えた血液中の糖(血糖)は、肝臓や脳、そして筋肉に取り込まれます。この取り込みがスムーズかどうかが重要です。なかなか取り込まれないとなると、血液中に糖が留まり血糖は高くなってしまいます。
肝臓と脳は自分で調整できませんが、筋肉は鍛えれば増えます。だからこそ、運動することが大切です。
では、どのようなタイミングでどのような運動が効果的なのか、具体的にみていきましょう。
効き目のあるジョギング法とは
血液中の糖を減らすなら、血糖値が高い食後が 「運動するには良いタイミング」 です。食後30分〜90分にかけて、スロージョギングで筋肉を動かしましょう。
スロージョギングとはゆっくりと行うジョギングのことで、隣の人と会話ができるくらいの速度で行います。
早足できびきびと。太ももやお尻の筋肉を動かすように行うと、糖を多く消費できます。
筋トレではスクワットがおすすめ
筋トレをする目的は、筋肉の量を増やすことです。筋肉が多い人ほど糖を多く使うことができ、血糖値は下がりやすくなります。
そこでまずは気軽なスタートを切るため週2~3回の筋トレを習慣化しましょう。おすすめはスクワットです。
ヨガも運動療法になるのか
体の柔軟性を高めると、血流がよくなり血糖値が下がると言われています。ゆったりと呼吸をしながらポーズをとっていくヨガは、無理なくスタートできる運動とも言えます。
またヨガには、予想以上にきついものもあったり筋肉を鍛えるポーズもあったりします。
血流アップと筋トレ効果も期待できるのが、ヨガの良いところと言えますね。
その他の見直した方がよい生活習慣
高血糖は生活習慣病なだけに、睡眠や喫煙、ストレスなど日々の習慣の見直しも大切です。
糖尿病のリスクが最も低いのは、睡眠時間が7~8時間の場合と言われています。またタバコは動脈硬化を進め、糖尿病の発症リスクを上げることもわかっています。
ストレスも糖尿病の一因です。ストレスがかかると血糖を上昇させるホルモンが働き、血糖値は上がります。
睡眠環境の見直しや禁煙、ストレスと上手に付き合うことも糖尿病予防に繋がります。血糖値を下げる生活習慣を身につけましょう。
参考記事:血糖値は季節で変動する?~冬になると数値が高くなる理由を解説~
まとめ
糖尿病の予防には、生活習慣の見直しが大切なことがお分かりいただけたと思います。
ポイントは以下です。
◎主食を今より10%減らして、血糖値を上げる糖質の摂りすぎを防ぐ
◎野菜や海藻、キノコ類の食物繊維を積極的に摂り、血糖値の上昇を緩やかにする
◎運動で筋肉を増やし、糖を消費しやすい体作りをする
◎睡眠不足、禁煙、ストレス解消で糖尿病を遠ざける生活習慣を身につける
緑茶やトマトジュースなど、糖尿病予防によいとされているものだけで血糖値が改善されるわけではありません。頼りすぎず、上手に活用していくことをオススメします。
以上、糖尿病の予防についてご紹介しました。
当記事があなたの生活習慣の見直しに役立ち、糖尿病の予防につながると嬉しいです。
なお、弊社の開発する無料アプリ・シンクヘルスでは血糖値や食事の記録がカンタンにできます。運動や血圧なども記録できますので、ぜひ活用してみてくださいね。
参考文献
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 生活習慣病の調査・統計
厚生労働省 eヘルスネット 生活習慣病
国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター
予防研究グループ多目的コホート研究(JPHC Stydy) 精神的要因、コーヒーと糖尿病の関連について
国立医学図書館 Psychological factors, coffee and risk of diabetes mellitus among middle
厚生労働省 eヘルスネット 特保(特定保健用食品)
一般社団法人 スロージョギング協会 スロージョギングとは