きくらげの意外な栄養成分~体に嬉しい効能とデメリットもお伝えします~
当記事の執筆は、管理栄養士 前間弘美が担当しました。
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中華料理で一般的に使われる、コリコリとした食感が特徴のきくらげ。きくらげは漢字で「木耳」と書きますが、その名の通り、野生では広葉樹の枯れ木や切り株に発生する耳のような形をしたきのこの一種です。
主に日本と中国で食用とされており、多くが乾燥品として流通されているきくらげには、意外な栄養成分が多く含まれています。
今回は、そんなきくらげの栄養成分や、体に嬉しい効能をわかりやすくお伝えしていきます。きくらげを使った絶品レシピもご紹介しますので、最後までお付き合いください。
目次
乾燥きくらげの栄養素と効能
乾燥きくらげは低カロリーな上に、体に嬉しい栄養素も多く含まれています。
ではさっそく、効能とともに順に解説していきます。
カルシウム
乾燥きくらげのカルシウム含有量は、きのこ類の中ではトップです。
カルシウムは、骨や歯の構成成分であるほか、細胞の分裂や血液凝固作用の促進などに関与しています。さらに乾燥きくらげには、カルシウムの吸収をサポートするビタミンDも含まれているため、骨の形成を促す効果が期待されます。
骨や歯を丈夫にしたい方にとって、乾燥きくらげは嬉しい食材ですね。
リン
乾燥きくらげは、リンの含有量も豊富です。リンは、体内ではカルシウムの次に多く含まれているミネラルで、骨や歯を作る働きがあります。
しかしリンとカルシウムは、どちらが多すぎても片方の吸収を妨げてしまうので、カルシウムとリンの摂取比率はほぼ同量が望ましいとされています。乾燥きくらげにはカルシウムの方が多く含まれているので、別の食材からリンを摂るように意識するとよいですね。
鉄
私たちの体にとって不足しやすい栄養素のひとつである鉄も、乾燥きくらげには多く含まれています。
貧血の予防や疲れやすさに関係する鉄は、ヘム鉄(※1)と非ヘム鉄(※2)に分けられ、乾燥きくらげに含まれているのは非ヘム鉄です。
(※1)レバーや魚介類等の動物性食品に多く含まれ、鉄分の中でも吸収がよいとされています。
(※2)海藻類などの植物性食品に多く含まれています。
カリウム
カリウムには、浸透圧の調整や尿中にナトリウムを排泄する働きがあるので、塩分の摂りすぎを調整してくれます。
乾燥きくらげにはカリウムも豊富に含まれているため、高血圧やむくみ予防としてカリウムを積極的に摂りたい方にも嬉しい食材ですね。
エルゴステロール
エルゴステロールは、プロビタミンD2(ディーツー)とも呼ばれ、ビタミンDに変化する物質です。エルゴステロールは紫外線と熱によりビタミンD2に変換されるため、乾燥させたきくらげには多くのプロビタミンD2が含まれています。
ビタミンDは、カルシウムと同様に骨の成長に必要なミネラルです。参考までに、乾燥きくらげ(1個1g)を9個食べると18歳以上男性の1日のビタミンD摂取目安量を満たすほど、ビタミンDを豊富に含んでいます。
生きくらげの栄養素は何が違うの?
肉厚でプリプリとした食感が楽しめる生きくらげは、約90%が水分です。
下の表で、乾燥きくらげと生きくらげの栄養を比べてみましょう。
*100gあたり
このように、生きくらげは乾燥きくらげに比べると低カロリーなものの、カルシウムや鉄などのミネラルも少なめになります。生きくらげは食感だけでなく旬も楽しめるので、乾燥きくらげとうまく使い分けるとよいでしょう。
乾燥と生どちらが健康に良いか
先ほどもお伝えした通り、乾燥きくらげは生と比べるとカルシウムや鉄などのミネラルが多くなるので、健康に良いと言えます。さらに、乾燥させることでうまみ成分が凝縮するので料理の旨味を増してくれます。
しかし生きくらげにも、きのこ特有の健康に良いβーグルカン(※1)やキチン(※2)といった成分が含まれているので、乾燥・生どちらも積極的に摂りたい食材です。
(※1)免疫力向上やコレステロール値を下げる働きが期待できます。
(※2)食物繊維のひとつで、コレステロール値の低下や肥満予防効果に期待できます。
きくらげが髪の毛によいって本当?
きくらげには、皮膚や髪の毛の細胞の産生にも関わっているビタミンB2が含まれているため、髪の毛によいといわれています。
ただし、きくらげばかり食べるのでなくバランスのよい食事が健康な髪の毛を保つポイントになります。
きくらげにデメリットはある?食べ過ぎには注意しよう
結論から申し上げますと、きくらげの食べ過ぎには注意が必要です。なぜなら、きくらげには豊富に食物繊維が含まれているからです。
便秘に効果のある食物繊維ですが、摂り過ぎることでおなかが緩くなるほか、栄養素の吸収を妨げる場合があります。なお、乾燥きくらげ100g中には不溶性食物繊維(※1)が57.4gも含まれており、水で戻したきくらげ100g(※2)でも、不溶性食物繊維は8.2gもあります。
(※1)水に溶けない食物繊維です。便のカサを増やすことにより大腸が刺激されるので、スムーズに排便する効果があります。
(※2)乾燥きくらげ1個=1g、戻したきくらげ1個=7gで計算
参考までに、生ごぼう100gに含まれる不溶性食物繊維は3.4gです。水で戻したきくらげ100gは、ごぼうと比較しても2.4倍もの多くの不溶性食物繊維を含んでいます。
また食物繊維には、不溶性食物繊維の他に水溶性食物繊維(※)もあり、どちらか一方を摂るのではなく、いろいろな食材から水溶性・不溶性の両方をバランスよく摂るのがオススメです。
(※)水に溶けやすい食物繊維です。小腸での栄養素の吸収を緩やかにするので、食後血糖値の上昇を緩やかにします。
きくらげを使った絶品レシピをご紹介
それでは、きくらげを使った簡単に出来る炒め物をご紹介します。
【きくらげと豚肉のオイスターソース炒め】
・きくらげ 6g
・豚もも肉 150g
(豚肉下味)
・酒 大さじ1
・醤油 小さじ1
・卵 2個
・サラダ油 大さじ1
・オイスターソース 大さじ2
【作り方】
①乾燥きくらげを水で10~15分戻して、一口大にカットする。
②ボウルに豚もも肉を入れ、酒と醤油をもみこんで10分ほどおき、下味をつける。
③卵を割りほぐしておく。
④熱したフライパンにサラダ油を入れ、③の卵で炒り卵を作る。できたらお皿に移す。
⑤④のフライパンに豚もも肉を入れ炒める。色が変わってきたらきくらげを入れて軽く炒めてオイスターソースで味付けする。
⑥⑤に④の卵を戻して、軽く混ぜたらできあがり。
参考記事:豚肉のカロリーと糖質が多め?〜部位別にわかりやすく解説〜
まとめ
以上、乾燥きくらげは低カロリーだけでなく、カルシウムや鉄、リン、食物繊維など、身体に嬉しい栄養素が多く含まれているとわかりましたね。
さらに乾燥きくらげは、生きくらげと比べて鉄やカルシウムなどのミネラル含有量が増えるのもポイントです。
しかし、いくら身体に嬉しい栄養素が豊富に含まれるとはいえ、きくらげばかりを多く摂るのではなく、いろいろな食材をバランスよく食べることが大切です。きくらげと一緒に、豚肉や卵の栄養素も摂れる絶品レシピも試してみてくださいね。
それでは今回の記事により、美味しいきくらげを日々の食事にうまく取り入れていただけると嬉しいです。
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参考文献
文部科学省 食品成分データベース
イートスマート TOPページ
厚生労働省 e-ヘルスネット
公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
国立健康・栄養研究所 きのこの栄養価と健康
農林水産省 詳しく知って楽しく食べよう! おいしいきのこ図鑑
JAにいがた南蒲 キクラゲ
福島栄養士会 きのこの栄養素と成分
農林水産省 森のごちそう“きのこ”
森林総合研究所 九州支所 キクラゲ
四国地域イノベーション創出協議会 地域食品・健康分科会 食品中の健康機能性成分の分析法マニュアル
知っておきたいビタミンDの知識
J-Stage 木耳のキチン分解腸内細菌出現の頻度
鳥取大学 様々な機能性を有する新たな食物繊維:キチンナノファイバー
厚生労働省 働く女性の健康応援サイト